勧誘系

日曜日の昼間である。何でもない日曜日である。夏のイチニチにすぎないのである。クーラーをつけて、FMをつけて、ボーッとベッドの上で聞いている、何をするというわけでもない、そんな、なんでもない日曜日なのである。

そんななんでもない日曜日の午後を邪魔するかのように、電話がかかってくるのである。携帯電話ではなく、ウチの電話がけたたましくなるのである。友人のたぐいならば、ケイタイのほうにしてくるに決まっているのだ。なにしろ、夏の、日曜日の、午後である。出かけているかもしれないではないか。よって、ケイタイを知っているなら、そっちにかけてきそうなものである。では誰か、家族か。家族はこんな時間にかけてこない。いないと思っているからである。よって必ず夜にかけてくるのだ。かといって、なぜかいないときもけっこうあるのだが。

ともかく電話が鳴っているのである。ケイタイを知らない友人やもしれぬ。しかし、経験からいうと、平日、休日に限らず、こういう昼下がりの電話で、ウチにかかってくるのは、勧誘系の電話なのだが。勧誘系の電話…けっこう厄介だ。しかも、こっちが異様にひまを持て余しているときは危険だ。忙しいときはいいのだ。即行で断るか、電話を切るか、あとは…

「もしもし」
「あの、わたくし、××というものですが、○○(ぼくの名前)さんはいらっしゃいますか?」
「いえ、今、出かけているのですが
「そうですか…それではまたのちほどお電話させていただきます」(ガチャ)

ぼくはひとりぐらしだって!

こういうイタズラは、まだかわいいものよ。ひまだった場合はかなりひどいかも。

「もしもし」
「あの、わたくし、××というものですが、○○(ぼくの名前)さんはいらっしゃいますか?」
「わたくしですが」
「たいへん急なご連絡で、申しわけないのですが、○○さんは〜をご存知でしょうか?」
「いいえ」
「なんじゃらかんじゃら」
「はぁ」
「ほにゃららへにゃらら」
「ほぉ」
(以下、くり返し)
「…というわけなんです」
え?なんでしたっけ?
「は、はい?」

これってけっこうひどいかな。延々、数分間しゃべらしておいて、何も聞いてない(ふり)ってやつ。だって、どっちにしても、向こうの商品その他についての興味ないし…、でも彼/彼女にもしゃべらせてあげたいじゃん…。

さらに、調子に乗ると、こうなる。

(さっきの説明の続きから)
「…というわけなんです」
おしごとごくろーさんです
「は、はい?」

こういうことをしてはいけなんだろうなぁ…

最終目標を“向こうをキレさせること”に設定した場合はもっとひどいかもしれない。この場合は、向こうから電話を切った時点で、ぼくの勝ちという設定だ。以前、目標をこれにして、延々30分くらい向こうにしゃべらせっぱなしにさせたことがある。だんだん、冷静じゃなくなっているのに冷静を装ってたのが…。何をやったかは、後ろから刺されるのがいやなので、説明しないことにしよう。

そうだ、そういえば、電話が鳴っていたんだった。ともかく、とってみた。

「もしもし」
「あの、××出張クリーニングと申します。……?(聞こえなかった)」
「はい?なんでしょう?」
奥さま、いらっしゃいますか?
「(な、なんだとぉ…?)あの、ひとりぐらしなんですが…」
「あ、そうですか。お勤めでいらっしゃいますか?」
「学生なんですけど…」
「あ、そうですか。失礼いたしました」(ガチャ)

な、なんだったんだ? おそらく、なんかの勧誘だったんだろうな…とは思うが、遊ぶひまもなく切られてしまった。なんだかなぁ…。

では、ひまにまかせて、想像上で遊んでみよう。

「もしもし」
「あの、××出張クリーニングと申します。……?(聞こえなかった)」
「はい?なんでしょう?」
「奥さま、いらっしゃいますか?」
「うるせぇ! このまえ別れたばっかりだ!
「ぐっ…
 あ、あの、お勤めでいらっしゃいますか?」
「うるせぇ! このまえリストラされたばっかりだ!
「ぐっ…」

相手がなんと答えるか、楽しみだ。

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