ああ、8月が終わってしまう。夏も終わりである。この夏は、否、この夏も、遊び呆けていた気がする。数年ぶりに海に行き（派手に転び）、数年ぶりに屋外のプールに行き、花火も見に行って、花火の場所キープに残暑の太陽光線も浴びた。たしかに、キャンプこそしなかったし、得意の怪談もしなかったし、海外逃亡もしなかったし、サミットにも出なかったし、別荘でのんびりもしなかったし、原潜を事故らせたりもしなかった。けれども、まあ、それなりに遊んでいたのではないかと思うのだ。それが証拠に、ほら、目の前には、「完了」マークのほとんどついていない、「レポートやらなきゃリスト」がある。
いわゆる「夏休みの宿題」ではないけれども、夏のあいだにやっておかなくてはならない課題の類というものは大学院生となってもあるわけで、そのひとつが各授業のレポートなのである。無論それ以外にも、夏が終わるまでに越えておきたい研究のライン、だとか、夏が終わるまでに読んでおきたい規格関連文書、だとか、夏が終わるまでに訳しておくと後々に楽な論文、だとか、そういうものを7月の頃には考えていたのだが、そのほとんどに手をつけないままに、8月31日を迎えてしまったのだ。とにもかくにも、まずはレポートから片づけなくてはならない、といった状況なのであり、これはまさに、児童生徒の類における「夏休みの宿題」というものとほとんど変わりはないのである。
余談ではあるが、児童・生徒・学生という言葉に関して、無造作に使用する輩の多いことを昔から憂いている。「児童」とは小学生のことを呼ぶ。「学童」が同義の言葉だ。「生徒」とは中学生や高校生のことを呼ぶ。「学生」とは“学校で勉強する人。主に、大学で勉強する人をいう（大辞林）”のである。ゆえに、大学生にもなって、自らのことを「生徒」などと言う奴は、それこそ、徒に生きているとしか思えぬ。
余談に力を入れすぎてしまった。話を元に戻そう。
世の中では、夏休みの宿題という奴は忌み嫌われているように見受けられる。曰く「夏休みって、せっかく休みなのだから、勉強なんてさせるんじゃないよ！」というわけである。とは言うものの、通常の宿題×夏休み日数、よりはおそらく少なかろうと思うのだ。というわけで、よく言われるのは、計算ドリル、だとか、問題集、だとかいうものは、さっさと一気に片づけるべし、ということである。聞いたことがあるだろう、「宿題なんて7月中に片づけて8月はめいっぱい遊ぶんだい」というやつである。残りは、読書感想文だとか、自由研究だとか、夏休みの工作だとか、そういうものだけれども、これはまあ、長期休暇にしかできないということで諦めたまえ、ということで勘弁していただきたい。
…と、暴言を吐いてみるものの、夏休みの前哨戦で宿題を片づけてしまったなどということは、義務教育期間中、決してなかったことなのだった。そして、義務教育の後では、夏休み明けに模試が控えていたりするという理由によって、それなりに問題集をやっていなくてはならないということになるのだった。さらに、大学に入ってからは、前学期が4月から9月までという理由で、レポート提出が9月になり、よって、夏休みにレポートをそれなりにやらなくてはならないということになるのだった。哀しい哉、これが運命というものなのである。まさに連戦連敗、過去に16連敗(6+3+3+4=16)である。
しかし、7月下旬から8月末まで夏休みである、我が国の学生としては、弱気なことを言ってはいられないのである。プライドにかけても、未提出だの、遅刻提出などということは許されないのだ。何としてもやっつけてやるのだ。進め一億火の玉だ。本土決戦だ。玉砕覚悟だ。玉砕してはどうにもならないのだが。
もちろん、7月の段階で立てた計画がそのままに進行しないからといって焦ってはならない。計画とはえてしてそういうものであり、そこにフィードバックを行い、修正案を提出し、決定を行い、実行に移し、状況を見てさらに修正を行い…とすることで、よりスリルに満ちた、楽しい夏休みを送ることができる。なにしろ、過去に児童であった折り、読書感想文の提出が9月2日であったことをいいことに、1日の始業式の直後に課題図書を友人に借り、そこからその本を読破し、感想文を書き上げ、しかも、その感想文が優秀作として表彰されてしまうほどの出来だった、というはなれわざをやってのけたこともあるのだから。ちなみに、優秀作云々というのは嘘であるが、その直前までは事実である。
というわけで、学ぶべきことは「なんとかなるのだ！」という処世訓なのだ。そして、「なんとかするのだ！」という強気の姿勢を忘れないことなのだ。
さて、8月31日である。明日は始業式そして宿題提出…とはならないところが義務教育の児童生徒の類と異なるものの、やはり、それなりの努力の欲しいところではある。だが、その努力に注ぎこむべき体力を、こういう文章を書くことで消費していっている我輩というものは、やはり、徒に生きているのではないのか？と疑問を感じる今宵なのだった。