危険はいつでもすぐ傍まで迫っている。ゆめゆめ、油断してはならないのだ。
如何に現代が安全な時代とは言っても、世の中、危険に満ち満ちている。世界の何処かで今日も紛争は絶えないし、そのような地域では道を歩いているだけで後ろから撃たれることもしばしばである。たとえ紛争とまでは言わないまでも、今も世界の何処かで銃撃戦が起きているに違いないのである。パトカーは蜂の巣、爆弾が爆発すればパトカーは舞い上がり、落ちたところには消火栓があって吹き出す水柱。そのような地域では、街を歩いているだけで銃撃戦がはじまり、たちまちあなたも蜂の巣である。この世は恐ろしく危険なのだ。
如何に我が国日本が安全な国とは言っても、世の中、危険に満ち満ちている。今日も隣国からミサイルで狙われているやもしれぬ。ミサイルで狙われたらもはや逃げる術はない。熊に襲われても逃げる術はなく、やるべきことは死んだふりをするくらいである。よって、逃げる術がなくなったら、死んだふりをするしかない。よって、ミサイルに対する防御法は死んだふりをする、である。なにしろこの日本でも、兵器開発から盗聴法からスパイから、戦時とも思われるような事件が多発しているのだ。聞くところによると、最近の十代の凶行は、密かに国民性を狂暴にし、戦争へと駆り立てようとする某組織の陰謀だともいう。その失敗作が、あのような事件を起こしているのだそうだ。そう、今この時間にも、危険な日記を書いてでへへと笑う危ない輩がいるのである。そう、この世は恐ろしく危険なのだ。
如何に我が大学が安全だと言っても、と言っても、この大学は安全ではない。なにしろ、原子炉研究所の横の池には三つ目の鯉が泳いでいるし、泳いでいるからこそまわりにフェンスを巡らせて見られないようにしてあるのだし、本館は変形してロボットになるし、ロボットになるのにそのコントロールルームは見つかっていないし、ロボットの武器になるのか、新研究棟の屋上には取っ手がつけてあるのだ。しかし、噂によると新研究棟の本館側が鏡張りなのは、ロボットが化粧をするためだそうだ。有事に際して化粧をするとは、さてはロボットは女であったか。そう、この大学は恐ろしく危険なのだ。
そして、研究室にいても危険はつきものなのである。まず、メールが危険である。
> ○○学会の講演論文原稿締切が9/9であったことを
> すっかり見落としていました。
> 至急作る必要があります。
> ご協力下さい。
そういうメールが、S教授から、朝、突如届いているのである。朝と言っても、普通の朝ではなかったのである。ここ最近、夜更かしがすぎていて、朝まともに起きられなかったので、徹夜明けから夕刻まで頑張って、それから少し早めに寝ることで、一気にこのサイクルを断ち切ろうとした矢先なのであった。このようなへろへろな状態で如何に論文を書けというのだ。だが、知らぬふりはできない。あとに流せば、仕事が溜まるばかりである。なにしろ、学会への参加は決定事項、申込済みなのだ。なんとしても、さっさとやらねばならぬのだ。こいつは、ともかく片づけねば…と思ったところで、睡魔襲来である。無理です、死ぬ。
とりあえず、詳細を聞かねばということで、教授のもとへ馳せ参じるのであった。すると、以前に私が出した学会原稿を加工して、それなりにできているとのお話。あとは、もう少し手を加えるだけのようだ。おお、素晴らしい。嬉しいのである。ありがたし、S教授さまさま。しかし、次の一言、曰く「私は午後から出掛ける」この時点で既に11時過ぎである。そして「8時すぎてから戻る」と。なんと、それは、私に8時すぎるまで研究室にいろと、そういうことでございますね。連続稼動はお酒ください、もとい、連続稼動はお避けください、という取扱説明書を読みませんでしたね。おお、睡魔襲来、絶対死ぬ…。
ともかく、やらねばならぬのだ。ともかく、闘うのだ。人生は、戦争なのだ。うりゃあ、ぐぐー、ZZZ…。はっ!こんなことではいけない。とりあえず、目処がついたところで、研究室のデスクで仮眠をとるのであった。3時過ぎから5時過ぎまで仮眠をとったところ、何とか復活。見事に、ノウミソちゃんは働いてくれている模様である。
そんなわけで、なんとかカタチにしたものの、である。8時になっても教授殿は戻ってこられないのであった。おお、限界を超えています。睡魔襲来です。で、なんだかんだで、9時過ぎに教授殿は戻ってこられた。当然の如くダメ出しを受けたものの、それに続く言葉がまた恐ろしいのであった。曰く「〆切は先週だったのだけれど、向こうとしては、最終〆切ぎりぎりまでなら4週間の余裕があるらしい」である。そりゃないだろう、ふつう、1週間も待てばいいほうだろう、と原稿というものについて思いを馳せる私なのだった。しかし、よく考えると、学会自体は11月下旬だものね、10月はじめに出稿すれば十分だよなあ、となると、その余裕も分かるよなあ。っておい! ってことは、今日の私の死ぬような思いはなんだったのだ!
その日は、終わりにした。それが昨日。そして今日、ダメ出しポイントを修正しつつ、考えることは、ただひとつ。来週月曜日の輪講の準備…まだやってないんだよね。しかも、その直後の水曜日〆切のレポート…これも手をつけていないんだよね。
そう、この世の中は恐ろしく危険な、というか、恐ろしく詰まりまくったスケジュールと無理な注文に満ち溢れているのだ。しかも,忙しいときに限って、さらに忙しくなるようにしくまれているようである。
そう…今週中にやると宣言したウェブのほうの仕事もあったんだよなぁ…。