手紙 (Document Analysis - 5)

先ほど、メールが届いた。

ども。tetsuya@stonefield です。

実は、お願いがあってメールしました。

私のウェブページ http://www.geocities.co.jp/Bookend/1111/ と、
その中のコーナー「微文積文」についてはご存知と思います。
こちらで、好き勝手に雑文を書き散らしているのでありますが、
現在、「ドキュメント解析」シリーズを展開しています。
ネタは大学院の講義なのですが、
この講義は、あるテーマにしたがってコラムを書き、
これについてグループごとに批評・討論を行い、
そういうなかで、文章力に磨きをかけようというものです。
このテーマにしたがって雑文しようというのが、
「微文積文」における「ドキュメント解析」シリーズなのです。

といっても、すでにご存知のことではありますが。(笑)
いちおう、説明させてもらいやした。

そいでもって、です。
実は現在、とてつもなく多忙を極めておりまいて、
残念なことに、今週のネタを書けそうにないのであります。
いや、実は、学会の1週間前にも関わらず、
データが全く出て来てないなどという状況でありまいて。
とんでもないことになっております。(^^;

といった状況ではありますが、
ここまで続けてきた「ドキュメント解析」シリーズを
中断はしたくないのであります。

そこで、笑いのセンスの溢れたる貴殿にお願いする次第なのであります。
今回の「微文積文」を、ぜひ執筆していただきたいのであります。

大先生! おねがいします!!! m(__)m
あとでこの借りは返すから。

あ、テーマは「手紙」ね。量・質・形式、すべて自由なんで。

というわけでよろしく。

----- tty.

なんだこれは。いきなり雑文なるものを、しかもテーマを縛られた状態で書けということかい。それはまあ、「微文積文」は読んでしまっているから、それなりに状況はわかってはいるけれども、そうはいっても、いきなり書いてくれというのは乱暴すぎじゃなかろうか、こいつ。

なんか普段にない敬語で来たから、なにごとかと思ったらこんな内容とは。した手に出れば、俺がなんとか願いを聞きとどけるだろうと思っているのが露骨に見えるぞ。第一、「笑いのセンスの溢れたる貴殿」とはなんだ。誉めているつもりなのか。「大先生!」といえば、誰でもいい気になると思ってるな。あの「いよッ!社長!」だとか「いよッ!大統領!」だとかの類だろう。まあ、俺も悪い気はしないが。それにしても、伊予に大統領がいたとは、おそるべし、坊ちゃん王国。いや、王国には大統領はいないはずだが。

といって、いい気になったものの、そうそう書けるものじゃない。とりあえず、これまでの「微文積文」「ドキュメント解析」を読みかえしてみて、そこから考えてみるに、書き出しはこうでいいのだろう。

といったわけで、大学院講義「ドキュメント解析」6回目である。今回のテーマは、「手紙」である。誰かを想定して手紙を書く形式ということなのであろう。

…と困った。ここまではいつでも同じ調子だから、誰でも書けそうなものなのだが。さて、このあとはどうなるんだっけな。えーっと、何やらテーマに関わって連想をしていくんだよなあ。「○○といえばあれである」ってやつだ。

手紙といえば、いろいろある。年始には年賀状、春ともなれば引っ越しのお知らせ、夏には暑中見舞いに残暑見舞い、秋はおいといて、冬にはクリスマスカードといった具合であろうか。それ以外にも、季節を問わず、恋文、私たち結婚しました、息子よ元気か、カネオクレタノム、請求書、領収書、借金の催促状、脅迫状などなど、様々な手紙が全国を行き来している。

最近は手紙というのもなかなか少なくなってきているが、これは文明が進歩して、電話やFAXやE-mailだとかいう媒体ができたためであろう。昔は通信手段としては手紙と使者と狼煙と虫の知らせとテレパシーくらいしかなかったから、今よりもっと手紙は重要なものだったはずだ。

このくらいてきとーなことを並べておけばいいんだろうなあ、たぶん。あと、もしかしたら、新約聖書を持ち出してきて、「ローマ人への手紙、ガラテヤ人への手紙、コリント人への手紙、…」と続けるなどということを、やつなら考えるかもしれないが、あまり一般的ではないのでやめておこう。

ここからどうするのかなあ。うーん、とりあえず、テーマに関係するどーでもいいような蘊蓄というか雑学というかネタを披露するっぽいなあ。

昔の手紙のなかでも有名なものは現代まで残っていたりする。平安時代の恋文だとかが、古典の教科書に載っていたりするのだが、これはよくよく考えると、かなり恥ずかしいのではなかろうか。あれだ、中学校なんぞで、ひとのラブレター奪うだか拾うだかして、教室で読んじゃうっていうやつだ、トラウマになるぞ。といっても、その平安時代の本人たちは、とうにお隠れあそばしておじゃるのだが。

さらに有名な手紙というと、世界一短い手紙というやつがある。これは、送った手紙が
 「?」
で、返ってきた返事が
 「!」
というやつである。これは、「レ・ミゼラブル(ああ無情)」の作者であるところのユーゴーが、本の売れ行きを編集者に尋ねた手紙(?)とそれに対する返事(!)なのであった。聞くほうも聞くほうだが、答えるほうも答えるほうである。

なかなか順調じゃあないか。でも、このへんで、いつもだとコラムを挟み込まなくちゃあいけないのだが、そんな面白いコラムなんて書けるわけないんだよなあ。せいぜい思いついたのはこんなかんじ。

くろやぎさんへ

あなたから頂いた手紙を、読む前に食べて失くしてしまいました。できましたら、先ほどのお手紙のご用事を、もういちどお伝えいただきたく存じます。
もうしわけありません。

しろやぎ

追伸 この手紙は食べない失くさないでくださいね。

うーん、やっぱり無理だよなあ。俺はやつのようなネタ人間じゃあないんだから、うまいこと書けるはずがなかったんだよなあ。っていうか、無茶な依頼を受けようとした俺がまちがっているよなあ。いや、無茶なメールを送ってきたやつのほうが間違っているんだよなあ。そもそも、俺はいち読者でしかないんだからなあ。ここは早めに鄭重にお断りしたほうがいいよなあ。よし、メールだ、メール。

ユーゴーの手紙のかんじならば、こうだろうなあ。

つまり、エクスクラメーションマークは、C言語系のプログラミングでは「否」の意味なのだ。わからないよなあ。誤解を招くよなあ。まあ、別に短くならばこれでもいいのだろうけれども。

×

乱暴すぎるよなあ。やっぱり、一文字でコミュニケーションをとったユーゴーと編集者はありえない関係だよなあ。となると、そこそこ短くていいや、っていうことで、こんなかんじでいいでしょう。

ネタ人間じゃない俺には無理です。

いや、ほんとは、ちゃんと書いてあげたかったんだよぉ。でも、まあ、世の中、無理なこともあるじゃない、…ん? あっ! ここまでぜんぶで、ひとネタできてんじゃん…。ちっ、まんまとやつの策略にはまってしまったぜぃ。

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