電話

Re-edition for Document Analysis -- entry column

どうも電話というやつが苦手である。部屋の電話が鳴るたびにどきどきする。うしろめたいことがあるわけではないのだが、誰だ、何だ、と思ってしまう。携帯電話ならばそうでもない。発信者がわかるからだ。しかし部屋の電話は別である。最近では「ナンバーディスプレイ」なるサービスもあるのだが、自分の電話にそんな機能はついていない。よって電話が鳴った途端に、鼓動が瞬間的に速くなる。

しかし、電話はかかってくる。とらねばならない。
「もしもし…?」
「あの、わたくし、××と申しますが、○○さんのお宅でしょうか…」
ああ、嫌だ。何かの勧誘の電話だ。下手なのに当たると、かなりのしつこさで疲労のみが残るあれだ。いつものパターンだと、
「○○さんはいらっしゃいますか」
「いえ、今出掛けていますが」
「そうですか…それではまたのちほどお電話させていただきます」(ガチャ)
などということを、独り暮らしにも関わらずやるのだが、今回は向こうの出かたが違ったのだった。
「あの、わたくし、××と申します。奥さま、いらっしゃいますか?」
これには正直言って驚いた。そういう電話は初めてだった。もしや、記憶のないうちに結婚したのかと一瞬疑ったが、そんなはずはない。
「あ、あの…独り暮らしなんですけど…」
「あ、そうでしたか。お勤めでいらっしゃいますか?」
「学生なんですけど…」
「あ、そうでしたか。失礼いたしました」(ガチャ)
一瞬のうちに、嵐は過ぎ去ってしまったのである。考える暇もなかった。

しかし、もしもこういう応対をしていたらどうなったのだろう。
「もしもし」
「あの、わたくし、××と申します。奥さま、いらっしゃいますか?」
「なんだとっ!このまえ別れたばっかりだっ!」
「うぐっ…あ、あの、お勤めでいらっしゃいますか?」
「嫌がらせか?このまえリストラされたばかりなんだよっ!」
「うぐっ…」
昨今の景気から考えて、こういう御仁もいらっしゃると思うのだが、どうなるのだろう。興味は尽きない。


Re-edition ...
ご存知のかたはご存知のとおり、これは、04. 1999.08.08 勧誘系 が元ネタとなっております。
ダイジェスト版とも言えるかもしれません。
for Document Analysis ...
「ドキュメント解析」のエントリーのためのコラム(テーマ「最近のびっくり」)で提出。
2000.10.12 の講義において、ベストコラムに選ばれました。(拍手!)
まんまじゃん、などと言ってはいけません。
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